
第44号(控訴審第24号) 2000年4月16日(日)
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控訴審弁論傍聴記
亜細亜大学法学部4年生のO・Hさん(女性)から傍聴記をお寄せいただいた。O・Hさんはこれまでにも、開明的裁判官の誉れ高い西口元判事(この3月まで東京地裁民事5部)の法廷傍聴の経験がおありとのこと。そちらと比較して遠藤国賠の法廷は、はたしてどのように映っただろうか。
[寅次郎] 3時10分前。法廷へ向う足が速まる。開かれた入口。人の話し声。たいていの場合のように、静閑な傍聴席へそっとドアを押し開けて入ることを予期していた私は、少しためらって足を止めた。高裁809号法廷、再確認し、中へ入る。控訴人側2列目に腰を下ろすと、間もなくして「どうぞ。」と会の方から小冊子を手渡された。「準備書面」とある。私はそれを黙読しはじめた。隣席からは、裁判官に対する不審の念を活発に議論する声が聞こえてきていた。 裁判開始間もなくというところで、ふと顔をあげると原告代理人の後ろの席に一人の男性が物静かに座っているのが見えた。遠藤さんだ、実際お会いしたことはなかったがお顔は何かで拝見したことがあったのですぐに分かった。 裁判官入廷。十数名の方がいたと思われる傍聴席の話し声がやむ。束の間の静粛。他の裁判と変わらぬ裁判開始の儀式。 弁論開始。阿部弁護士が先ほど私も頂いた準備書面を読み上げはじめる。
「この準備書面で指摘する刑事一審裁判の違法性は、物的証拠の評価に関するものであり、いわゆる物証論にかかわるものということになる。・・・」先ず、最高裁が指摘している情況証拠の欠陥、供述証拠の欠陥に加え、「右後輪付着物等にO型の人血が含まれていて、それが本件事故に由来するもの」と認定することの欠陥を指摘。日本の普通の裁判官の少なくとも4分の1以上がこのような事実認定をすることに疑問符を投げかける。 続いて、右後輪付着物が血液ではありえないことを、行われた鑑定結果やその信用性の面から論証。法医学の常識が最高裁まで受け入れられなかったことの不備を批判した。 次いで、被害者の血液が右後輪の外側ホイール近くに付着することはありえないことを示す。さらに、検問検査での警察官や被告人(遠藤さん)、警察から連絡を受けた会社の上司・同僚らの点検によっても血痕が発見されない不自然さ、発見したと報告されている警察官の対応の不可解さを指摘した。
そして、これら物的証拠をめぐる判断に関し、刑事一審判決は「何としても有罪」という立場でのぞんでいることを論じ、その判断の違法性を主張。また、原判決・東京地裁判決も、本件最大の争点である、刑事一審判決の血痕鑑定における認定・判断の違法性という点について、無内容な判決理由で判断を放棄している上、控訴人が右後輪付着物を捜査関係者の捏造であると主張したとしていることを厳しく批判し、ごまかしであると指摘した。
「・・・いま、国民は、この課題に答えを出すことを貴裁判所に求めているのである。必要な証拠調べをなし、そして、慎重な審理を遂げることで応えられたい。」陳述の間、しばしば弁論に賛同する笑いがきこえてきていたが、陳述後、「従前通り。」という国側の返答と同時にわっと法廷がわく。
「従前通りとはどういうことですか。」裁判長と控訴代理人がやりとりする中、傍聴席からは批判の声の嵐。たまりかねたのか、裁判長から「退廷を命じますよ。」の声。
「いいよ。言うこと言ったから出ていきますよ。」傍聴者の一人が退廷する。 次回の弁論期日を決める話し合いになって、よく目にする裁判の光景が戻る。「どれくらいで(次回期日をいれるか)。」「いつも通り(の間隔)でいいですよ。」「連休の前か、後か。」「では、5月15日3時からでいいですか。」特に争いもなく、次回期日が決まる。弁論終了。 傍聴者の発言は、大変迫力のあるものでした。しかし、裁判の中身を見てみると、阿部弁護士が準備書面を読み上げ、次回期日を決めただけなのです。この裁判が長引いている原因を垣間見たような気がしました。 これまで、他では度々傍聴してきましたが、期日指定まで議論が及ぶことのある裁判もあります。その裁判部では、次回主張する側が準備するのにかかる期間を定めます。それをもとに、反論する側がその反論の準備をするのにかかる期間を勘案して、さらにその何日か後に次回期日を設定します。弁論期日のための準備が相手の準備書面にかかっているので、「もう少し早く用意しろ」という議論になるのです。今回の場合ですと、次回控訴人が主張する準備書面を準備するのに5月15日までかかるのであれば、国側はその準備書面を受け取って例えば2週間後に書面を提出することにします。そして次回期日はさらにその一週間後の日(6月5日)に設けられるということになります。期日では準備書面の内容をお互い交換し合った上で、議論がなされるのです。 傍聴者の裁判に対する強い思い入れをひしひしと感じながらも、今回の裁判に物足りなさを感じたことは否定できません。
[亜細亜大学法学部4年生 O・H]  
1999年度会計報告 「この会も、会費を集めてるんですから、会計報告は、ちゃんとやらなくちゃだめですねぇ。」という話になり、ご多忙にも関わらず、簿記3級ということで今井さんの奥さんにお願いしました。ただ、支出の明細を出す作業が、本号の発行に間に合いませんでした。それで、年度始めに何の報告もないというのもあまりよくないので、とりあえず概算だけ、下の通りご報告させて頂きます。 1999年度会計報告
収入 会費 44万8532円 支出 41万8224円
繰越 35万1670円
次回弁論のお知らせ 次回弁論は──
霞ヶ関の裁判所ビル8階 東京高裁民事9部・809号法廷 ──です。 ぜひ傍聴におこし下さい。弁論終了後、ミーティング及び懇親会を行いますので、こちらもぜひどうぞ。前回の懇親会も盛り上がりました。 前回の懇親会の様子
皆さん、けっこうできあがってます。  
事務局から ●当ニュースの記事、投稿の署名について一言。もちろん実名が望ましいけれど、ペンネームもかまわない。 遠藤国賠は無責任な司法を問題としており、この国では無責任なヤツほど高い地位につく傾向があるようだ。それを改革しようとする司法試験受験生が、司法の一角に食い入る前に、遠藤国賠を支援したがゆえに不利益を被るなんてことがあっては困る。また、たんに照れ屋で実名を出したくない人もいるだろう。その辺りをうるさく言うつもりはない。 なお、「実名で」とのお申し出がない投稿については、お名前の頭文字表記とする。そういうことでよろしくお願いします。 ●4月6日、小学館文庫から『ここが知りたい交通違反・裁判まるわかり』(税込580円)を上梓しました。遠藤国賠のことも紹介しています。
[今井亮一] ●第44号は、たった4ペ−ジになってしまいました。年度始めということもあり、皆多忙で記事が集まらなかったのです。そんな中、傍聴記を書いて下さったO・Hさん、本当にありがとうございました。 当会では、弁論を傍聴してレポートしてくれる方を随時(常時)募集しています。皆さん、どうぞよろしくお願いします。
[ガヴァガイ] ●先日、夜遅くまで残業してました。仕事に行き詰まり休憩でもするかと思ったとき、外でバイクの騒音が鳴ってることに気付きました。窓からのぞいてみると1台のバイクがうろうろしてます。紅茶を飲みながらしばらく眺めてるうちに「警察を呼んだら追い払ってくれるのかな?」と思い立ち警察に電話しました。 10回以上コールしてようやく出た警官に状況を説明すると、「直ぐに向かわせます」と真摯な対応。ところが待てど暮らせど一向に警察は来ません。20分ほど待っても来ないので、もう一度電話すると別の人が出て「すいません、直ぐ行きますから」という返事。それでも警官は来ず、それから30分ほどしたらバイクはどっかへ去っていきました。巷で噂の「警察の出動拒否」を体験できて非常に有意義な一夜でした。
[カブ] ●私生活にて多忙を極め、2月来お休みをいただいております。いろんな企画がもちあがっている中、ただでさえ人手不足の事務局です。たいへん心苦しいです。申し訳ありません。そしてどうかみなさん、暖かいご協力を。
[tommi] ●遠藤事件刑事一審の最初のころ、「阿部さん、この事件おかしいんだ」ともらしたという村山創史氏(当時公判立会い検察官)が、このほど仙台高検の次席検事に異動しました。思いおこせば、最高裁での立会い検察官は、元札幌高検検事長の佐藤道夫さん、金融監督庁初代長官の日野正晴氏というそうそうたる顔ぶれでした。前者は、いま参議院議員でスジを通す物言いとその誠実な人柄で人気のある方ですから、ご存じの方も相当おいででしょう。 ところで、その佐藤さん、一連の警察不祥事に関する座談会で元警視庁警察官の黒木昭雄さんを批判しています。「(ウラガネ作りのためのニセ領収書への署名が)犯罪とわかっていたのならば(相手が上司だろうと)なぜ拒否しなかったのか」と。実に正論です。しかし、それでは、と佐藤さんに思わず聞いてみたくなりました。「遠藤事件に立ち会われた際、遠藤さんがひいたと本当にお考えだったのですか。もし、ひいていない、無実だとお思いだったのであれば、どうして『無罪の論告』をしてくださらなかったのでしょうか」と。 ●最近製作された「市民の司法をめざして〜司法改革ビジョン〜」という日弁連(日本弁護士連合会)のビデオに遠藤さんが出演しました。冤罪は、必ずしも過去のものではなく現在もなお発生し続けている・・・。その代表的・象徴的な例として遠藤事件が紹介されています。 日弁連でも注目の遠藤国賠ということで支援活動をよりいっそう充実させたいと考えています。今後も、ご支援のほどよろしくお願い申し上げる次第です。
[寅次郎] |
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発行: 「遠藤国家賠償訴訟を支援する会」
代表 : 今井亮一 (交通ジャーナリスト) |
