遠藤国賠ニュース

第40号(控訴審第20号) 1999年5月23日(日)

ホームページ記念号!

 

 
控訴審弁論報告 [寅次郎]

 さる4月21日(水)午後3時より口頭弁論があった。そこで、以下、概要を報告する。

●弁論の更新●

 両陪席裁判官が交代したというので、またまた弁論の更新が行われた(昨年10月あったばかりなのに)。弁論の更新とは、新たに着任した裁判官にそれまでの弁論の結果を聴取させる手続である。

 そこで、今回もまず阿部代理人が事件の概要、刑事一・二審の経緯などについて事実を淡々と、しかし、時折、力を入れて、約40分語った。

 今回は、さらに約20分、「裁判違法」(裁判官の違法行為)について、「刑事司法とは何か」という根本にさかのぼって吉永代理人が説きおこした。右陪席裁判官は、フムフムと、少なくとも外見上は聞き耳を立てているように見えた。それに対して、左陪席は、「そんなこと言われなくてもわかってるよ!うざってえなあ!」といわんばかりの不遜な態度に見えた。

●騒然とする法廷●

 しかし、そんな左陪席も、吉永代理人の陳述、「第六 4分の3という思考」のくだりになると、不機嫌そうな表情に変わったように見えた。というのも、刑事一・二審の裁判官は、証拠関係からは無実としか考えられないことを知っていたにもかかわらず、あえて有罪判決を$書いたのだ!という通常ならば驚くべき事態を、いわば逆説的、かつ説得的に吉永代理人が陳述したからだ(この部分は参考資料として後に引用)。

 法廷で面と向かってこんなことまで言われている裁判官らの心中やいかに!と、なぜか私がハラハラしてしまった。代理人の陳述が終わると傍聴席からは思わず拍手がおきた。拍手は、法廷では本来御法度(ごはっと)なのだが、この裁判長は静止できなかった。そういう雰囲気・流れができてきたようだ。

 その後、原告側と被告側とのやり取りの中で、「公安委員会規則は法令ではない!」とかいう珍説を被告国側代理人が展開し、原告側をアゼンとさせた。いかにバカバカしい主張であることか!と批判する原告側に対して裁判長は「そう言ってるんだからそれでいいでしょ!」と、一見被告側に味方するかのような発言をした。日ごろ温厚な環(たまき)代理人団長が、そこまで言うならと、「では、裁判長の言う線で調書に記録しといてください!」と強い調子で言うと、被告代理人は「そんなこと困ります!」と反対した。あまりにも愚かな主張であることを自ら十分知っていて、記録されてはかなわないと自白しているかのように見えた。

●裁判長、注意できず●

 傍聴席からは、HさんやSクンらがさかんに、「ナーニ言ってんだよ!」とヤジを何度も飛ばした。さすがに、これは注意されるだろうと、「主任傍聴人」の私はヒヤヒヤ・ドキドキしていたが、裁判長は黙っていた。左陪席が、注意しなくていいのか?と言いたげに裁判長を見やっている。被告代理人はたまらず傍聴席に向かって、「傍聴人は黙っててくださいよ!」と、声を荒げた。

 この日の法廷で被告国側代理人は、あらん限りの詭弁(にもならない詭弁)を労してまで、ひたすら抵抗する姿勢を示した。彼らの多くは、訟務検事(しょうむけんじ)といって、れっきとした検事なのだ。「巨悪を剔抉(てっけつ)し、悪い奴を眠らせず、被害者とともに泣く検察!」なんていう元検事総長の“座右の銘”に対して恥ずかしくないのですか? 訟務検事の皆さん!!


《参考資料》 「六. 4分の3という思考」

 吉永代理人の陳述、殊に傍聴席からの拍手を呼んだ「六. 4分の3という思考」の部分を全文引用することにする(一から五は項目のみ)。以下の通り。

一. はじめに
二. 真犯人を見逃してはならないという命題について
三. 刑事司法の使命
四. ルール違反に対する感覚麻痺
五. 裁判官の責任
六. 4分の3という思考

 前述のとおり、原判決は、

 普通の裁判官の少なくとも4分の3以上の裁判官が、合理的疑いをもって無罪の事実認定をしたであろう事案について、誤って有罪判決をした場合には、「著しく不合理な事実認定」として国賠法上の違法があると認定される。

 と述べて、刑事一・二審判決を救った。

 原判決は、右判断基準について、右4分の3という数値は、あくまで比喩的な表現であると述べて、この4分の3という数値の検証方法については、敢えて触れていない。しかし、原判決は、具体的な検証方法はともかく、その立てた命題は、いわゆる「検証可能性」がある命題であるといいたいのであろう。即ち、「普通の裁判官の少なくとも4分の3以上の裁判官が、合理的疑いをもって無罪の事実認定をしたであろう」という命題は、現実には実行不可能であっても、日本全国の裁判官がこの刑事事件を審理することによって右命題の真偽が判定できるから、右命題は有効である、というのであろう。

 しかしながら、この考え方は、完全に間違っている。

 刑事判決が違法であるか否かは、国家機関である裁判所ないし裁判官の「規範的な判断」であり、「事実の問題」ではない。原判決の論理を推し進めれば、裁判官全員で悪いことをすれば、悪さを問われない、ということになる。そんなばかなことはない。まさに、原判決は、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」式発想で、物事を処理していこうとしている。原判決は、規範的判断を事実問題に還元してしまっており、理論的に成り立つものではない。

 別紙図面Aは、現行憲法が予定している刑事裁判の審理原則である。一方図面Bは、刑事一・二審判決をはじめとして現実の刑事裁判が採用していると原判決が指摘した審理方式である。この図面Bには、真の犯人を見逃してはならないという命題の下で、刑事裁判官が、本来無罪を言い渡すべき「疑わしい事件」、さらに「無罪の証拠がある事件」にまで有罪判決を言い渡している状況が描かれている。

図面A (憲法が求める審理原則)
図面A (憲法が求める審理原則)

図面B (原判決が指摘する審理方式)
図面B (原判決が指摘する審理方式)

 原判決に言わせれば、わが国の4分の1以上の裁判官が本件事案において有罪判決を出す可能性があるということになる。秩序思考派の裁判官が多数を占めているとなれば、原判決の言うとおりかも知れない。誠に恐ろしいことである。しかし、だからといって刑事一・二審裁判官が免責されることにはならない。

 控訴代理人は、この図面を描きながら、本件刑事一二審裁判官が次のように叫んでいる声が聞こえてくるような気がした。

 遠藤さん、私達裁判官は、あなたのアリバイが成立したことは良く分かっています。後部車輪の付着物が血痕ではないことも良く分かっています。当の(鑑定人の研究論文によって)鑑定結果がいい加減であることも良く分かっています。こんなところに血痕がつく筈がないことも良く分かっています。「少なくとも冷凍車のようなものではありませんでした」などという供述が、(われわれ普通の)人間の体験事実とかけ離れていることも良く分かっています。

 しかし、遠藤さん、私達裁判官は、秩序を維持しなければならない使命があります。ひき逃げ交通事故は発生し、現に尊い命が失われました。交通戦争の中で、一人でも死亡事故をなくすのが私達に課せられた課題です。そのためには、自動車運転手に、ひき逃げ犯人は必ず捕まるのだという警告を与える必要があります。

 また、遠藤さんの事件で私達が無罪判決でも出したら、私達はどうなるでしょうか。私達は、事件の内容を知らない先輩、同僚、後輩から、お前は何をやっているのだ、刑事裁判をする能力があるのかと批判されることとなります。私達は、事務処理能力において優秀であるにも拘らず、その能力を正当に評価してもらえなくなってしまうのです。

 遠藤さん、申し訳ありませんが、このような事情のために、有罪判決を出しました。しかし、死亡事故で実質ひき逃げというきわめて悪質な事件であるのに、しかも示談もできていないのに、執行猶予を付けてあげたではないですか。

 平野龍一が刑事裁判は絶望的であるといったことが本当に良く理解できる。わが国の刑事司法は死滅しつつある。

 裁判官は、事務処理能力において優秀だから高い給料が支払われているのではない。欲望の多い人間が、さまざまな誘惑の中で、法と良心のみに従って判決を言い渡すということは大変エネルギーがいる仕事である。国民は、そのようなエネルギーを使う対価として、裁判官に高い報酬を支払っているのである。

 以上の理由により、この高裁民事9部裁判所におかれては、日本国憲法における裁判制度の本来の姿に立ち返り、原判決を見直し、刑事一審判決の裁判官並びに刑事二審判決の裁判官の民事責任を明確にされることを願う次第である。


 今後も裁判資料を掲載する予定である。なお、ホームページでは、刑事一・二審・最高裁判決等の資料掲載を計画中だ。

[広報担当:寅次郎]


事務局から

●「遠藤国賠を支援する会」のホームページがついにできた!

 前々から「やろうつくろう」と言っていてなかなかできなかったものが、この4月、ついにできた。しかも、実にわかりやすい、なかなかリッパなものが。

 なぜ突然できたのかというと、「ペンネーム:ガヴァガイ、京都府内在住の、自称気弱な大学院生」という方が、「月刊交通違反」(編集長:今井亮一)のホームページを通じて遠藤国賠のことを知ってくれ、強い関心を持ってくれて、当会事務局の寅次郎に資料請求をされた後、あれよあれよと思う間に、作ってしまってくれたのだ。

 ボクは常々、「こういう運動みたいなものは、『ええい、オレがやってやる!』とどんどんグイグイすすめてしまう人が核として存在しないとなかなか難しい」と思っていた。その「核」となる人が現れてくれたような気がする。

 ほかに、O・Oさん(静岡県)といって、この方は会社員で忙しいけれどもパソコンやインターネットのことには詳しく、協力を申し出てくれている。ありがたいことだ。

 インターネットの人口は全体としてはまだまだそう多くないけれど、手軽さという点で、他の媒体をはるかにしのぐものがある。遠藤事件がいかにひどい冤罪か、裁判所がいかにデタラメか、まずは広く知ってもらい、新しい展開をつくり出すことが可能だろう。

 ホームページをさらに充実させていきたい。

[代表:今井亮一]


●というわけで、当会のホームページができた。

 パソコン環境の許す方は、ぜひともアクセスしてみていただきたい(アドレスは、ページ上部)。

 内容は、今のところ「遠藤国賠訴訟パンフレット」だけだけれども、今後、「刑事最高裁判決(同一・二審判決)」「国賠一審判決」などを掲載していく予定だ。さらには、当国賠ニュースのメイルでの配信も計画中。

 なお、さまざまな国賠事件相互の連帯・交流のための団体「国賠ネットワーク」のホームページにも、ぜひアクセスしていただきたい。

http://www.jca.ax.apc.org/kokubai

●広報担当として当ニュースを作成するに当たり、色々な方々に感想を聞いてみた。

 曰く、「敬語の使い方がなってない。身内に敬語を使ってどうする!」、「感情的な修飾語が多すぎる。事実を淡々と示せ!」、「ひき逃げ被害者の視点がない」、「大学のサークルののりだ。社会人も対象であることを意識してほしい」、「紙面が字だらけ!」、「訴訟の進行具合がわからない」等々。

 これらのご意見は、今後、ニュース作成になんとしても役立てていこうと思っている。

●みなさまからは、毎月、会費・カンパをいただいております。ありがとうございます。

 会費の一口1,000円という金額は、できるだけ負担の少ない額にすることで、より多くの方々に気軽に参加していただけるように、との思いから設定しました。引き続き、みなさまがたのご入会・ご支援をお願いいたします。

 また、このたびとても高額なカンパもいただきました。上記の次第ですので非常に恐縮いたしましたが、ありがたく頂戴いたします。

 なお、封筒の宛名シールに○印のある方は、年会費(1口千円。振込月から1年)を、氏名の後ろのカッコ内にある月にいただいています。ご承知おき下さい。

郵便振替の口座は、
 加入者名:遠藤国賠訴訟を支援する会
 口座番号:00150-9-168587
です。

 貧困なる精神状況下の日本では、何かと支援応援しなければならない事柄が多く、恐縮ですが、今後ともよろしくお願い申し上げる次第です。

[広報担当:寅次郎]


●tommiさんが事務局に加わってくれることになりました。

 当会事務局は、寅次郎さん1人の奮闘に支えられていました。しかしこのたび、tommiさんが事務局に加わってくれることになりました。

 私から見たtommiさんは、

いつもパーティ帰りのような服装をしていて、
靴のかかとが高く、
ふだん、ボロい(失礼)カローラに乗り、
ピンクのキティちゃんパソコンを使用し、
私などより法律に詳しく、そうとう頭がきれ、正義感が強く、
なんというか人間として勢いがある、ウソのない、

千葉県在住の20代の女性です。

tommiさんに加わっていただくことは、非常に力強いです。

[代表:今井亮一]


●資料請求や問い合わせ等の際に「轢き逃げされた被害者のご遺族」を心配する声が聞かれることがある。

 『ドキュメント交通事件』(矢貫隆著、恒友出版、1988年)によると、ご遺族は捜査当局から捜査・裁判を通じて判明した事実等に関し正確なところを告げられず、また刑事事件の公判期日を連絡するよう頼んでおいたにもかかわらずこれを受けることもなく、結局、当初の捜査における「参考人」とされたにとどまったようである。つまり、以降はまったくの「部外者」として終始したことになる。

 被害者の奥さんは刑事事件が最高裁に係属中に矢貫氏の取材を受け、その時に初めて「真実」を知らされ、非常に驚きつつも「それでも、遠藤が犯人であって欲しい」とおっしゃった、という。

 冤罪事件においては、無実の人間に不必要かつ重大な苦痛を与えるのみならず、当然のことながら「真犯人」を逃す結果となる。もとより「真犯人」が検挙・処罰されたからといって被害者(及びその遺族)が必ずしも救済されるわけではないが、やはりその被害感情を癒すという効果の大きさは無視しえないであろう。これは同時に、「冤罪」事件が「冤罪」被害者のみならず、「犯罪」被害者にも多大な苦痛を与えるものである、ということを意味する。彼らは、その怒り、憎しみの矛先を何処に向ければいいのだろうか。

 最近の「冤罪事件」として記憶に新しい「松本サリン事件」で「犯人」とされた河野義行氏は、ことあるごとに「この事件で亡くなった7人の方のご遺族たちは、1年もの間、私を憎みつづけてきたことだろう。私が『犯人』でないと明らかになった時、彼らは、どう心の整理がつくのだろうか」といった趣旨のことをおっしゃっている。

 「冤罪」を考えるに当たっては、こういった視点を忘れてはならない、と強く思う。

[tommi]


次回弁論期日は、

6月28日(月)午後3時〜4時30分
霞ヶ関の裁判所ビル8階・東京高裁809号

 法廷傍聴はもちろん無料。途中で入退廷もできます。お気軽においでください。弁論終了後、ミーティングと恒例の懇親会を行います。こちらもぜひどうぞ。

 


発行: 「遠藤国家賠償訴訟を支援する会」

代表 : 今井亮一 (交通ジャーナリスト)
広報 : 寅次郎  (勤人&大学院生)

  事務局連絡先:
     Tel & Fax 03-3319-3012
     E-mail:ip2m-sgym@asahi-net.or.jp